歯科スタッフの退職が続くとき、職場の何を点検するか
また一人、スタッフが退職する。院長は勤務表を埋め、求人を書き直し、次の人を探すことに追われます。その対応とともに、次の入職者を迎える前に考えたい問いがあります。この医院で働く環境を、どこまで実際に確かめただろうか、という問いです。
退職が繰り返されるなら、職場を詳しく見る意味があります。ただし、全員が同じ理由で辞めたことや、本人の説明が口実であることの証明にはなりません。本人が話したことを尊重し、医院が変えられる条件を調べる。その両方を進めます。世代への決めつけを、特定の管理者への決めつけに置き換えても、理由が分かったことにはなりません。
聞けたことから始め、分からないことを残す
進学や学び直し、転居、勤務時間の変更を理由に挙げたなら、それを本人が述べた理由として記録します。根拠がないまま「本当は管理に不満がある」と書き換えません。個人の事情と職場での経験が両方関わることもあり、医院がすべてを知れるとは限りません。
閲覧する人を限った短い点検記録を作ります。職種、入職日と退職日、本人が共有した説明、関係する支援や勤務の条件を整理します。確認できた事実と解釈は分けます。「予定した研修が中止された」と「その中止が退職を引き起こした」は、同じ記述ではありません。
対象の期間を決め、退職の数え方もそろえます。職種を比べるなら、各チームの人数や、その期間に入った人数も併記します。仮に、増員中のチームから二人辞めたとしても、ずっと小さいチームの一人と、数字だけで比べて結論を出しません。少ない件数は、絞った質問をするきっかけであり、原因を断定する材料ではありません。
採用時に説明した仕事と、実際の仕事を比べる
求人、面接の記録、職務の説明を、実際に任せていた仕事と並べます。時間、責任、指導、学ぶ機会を正確に伝えていたでしょうか。役割が変わったなら、いつ話し合い、どんな支援を変えたでしょうか。
「合わなかった」という広い説明を、仕事についての問いに置き換えます。どの責任が曖昧だったのか、どこまで判断できたのか。約束した学習の機会は勤務時間の中にあり、通常業務を代わる人もいたのか。募集時の説明と日々の運用が違えば、面接を工夫するだけでは埋められません。
分かったことを、次の募集内容に反映します。仕事の難しさを正直に伝え、役割に関係する質問を用意し、教育の予定を具体的にします。一つの業務でうまくいかなかっただけで、その人の性格や意欲を決めつけません。何を説明し、教え、観察できたかを確かめてから、能力や取り組み方を考えます。
教育計画に加え、実際に教える時間があったかを見る
指導者の名前や入職時の資料は出発点です。その人に教える時間があったか、不在時に代わる人がいたか、指示が食い違ったときに新人がどうすればよいか分かっていたかを確かめます。「完了」が資料を渡しただけなら、学べた内容までは分かりません。
日常の業務をいくつか選び、学ぶ順序をたどります。見本を示したか、適切な支援のもとで練習したか、一人で任せる前に振り返りがあったか。診療上の責任や指導は、医院で定めた体制の範囲で扱います。人が足りないことを理由に、診療業務を独自の判断で任せることはしません。
最初の90日を点検の区切りにしてもよいですが、その期間で全員の将来が決まるわけではありません。役割、システム、チームが変われば、その後にも支援が必要です。在職する人に、今も推測で進めている場面がないかを聞きます。手順のどこが不明かという答えは、「もっと自分から動いて」という依頼より、直す対象を具体的にできます。
問題を報告した後の対応をたどる
最近の事務上の問題を一つ選び、報告された時点から見直します。誰が受け取り、何を確かめ、報告した人へ結果をどう伝えたか。誰が扱いにくい、誰が不注意だという評価から始めず、実際の流れを調べます。
ミスを報告しやすくすることと、守るべき基準をなくすことは別です。何が起きたかを確認し、差し迫ったリスクは適切な手順で扱い、何を変えるかを決める必要があります。その事実確認を、人前での非難や動機の推測と混ぜないようにします。
相談をためらうという声があれば、何が難しくしているかを尋ねます。時間、分かりにくい窓口、取り合ってもらえなかった経験などが話題になるかもしれません。対応のために共有が必要な事柄を、すべて完全に秘密にすると約束しません。話をどう扱い、誰に伝える必要があり、いつごろ状況を知らせられるかを説明します。
患者さんの安全に関する懸念は、医院の診療上の手順で対応します。この職場点検のために、次の経営会議まで先送りするものではありません。通常の業務上の問題では、合意した対応と担当者を確認できる記録にし、実行されたかをチームで確かめます。
給与、業務量、評価を一緒に見直す
学ぶ機会や親しい同僚がいるからといって、給与への懸念を退けないようにします。反対に、指示の矛盾や時間内に終えられない業務量への懸念が、給与変更だけで解決したとも考えません。どの問題を話しているかを尋ね、実際の条件を調べます。
仕事の振り返りでは、事前に伝えた基準と、話し合いに使った具体例を確認します。似た状況を一貫して扱ったか、誤解を本人が訂正する機会があったか。成長のための次の課題を約束したなら、それを準備する担当者は決まっていたでしょうか。
認める言葉は、特別なイベントでなくても伝えられます。見た貢献と、その意味を具体的に話します。ただし、時間、給与、支援について残っている問題の埋め合わせにはしません。医院として決めていない昇進、資格取得、昇給を、引き留めるために約束しないようにします。
患者さんの選択を、スタッフの販売目標にしないことも大切です。考える時間を取る、治療を受けないという本人の判断を尊重した人が、熱意不足と評価されないようにします。予約や治療への同意という結果だけでなく、仕事の正確さや対応の質も確認します。
退職時の対話で、告白を求めない
退職時の対話は学ぶための機会であり、隠れた「本当の理由」を言うかどうかの試験ではありません。「新しく入る人に、前もって何を伝えたいですか」「予想していた仕事と、違ったところはどこですか」「必要でも受けられなかった支援はありますか」といった実務の問いを用意します。
答えない選択や、用意できる別の方法で伝える選択も尊重します。誰が記録を読み、どう使うかを説明します。小さなチームで状況から発言者が分かるなら、匿名になると約束しません。個人的な事情の詳細を、全員向けの説明資料に載せることも避けます。
在職する人にも同じ仕事の条件について聞きますが、同僚の退職理由を推測させません。具体例や経験の違いに耳を傾けます。似た話が複数あれば調べる方向は定まりますが、勤務表、役割、約束した変更の実施状況を確認する代わりにはなりません。
見えてきた傾向を、一つの確認できる改善にする
架空の医院で、最近の二人の退職を振り返る練習を考えます。二人とも受付担当として入職し、指導者は決まっていました。ただし、受付が混み合うと、確保していた研修時間が繰り返し取り消されていました。一人は個人の事情を退職理由として挙げ、もう一人は指示が分かりにくかったと話しました。これは事務上の点検を考える仮の例であり、実在の医院の事実や退職原因を示すものではありません。
ここで確認できるのは、約束した教育時間が安定して取れていなかったことです。それが二人の退職を説明すると決めなくても、その事実は調べられます。代わりの指導者を決め、各研修の前に業務を代わる人を確認し、変更時は振替を記録する、といった改善が考えられます。新人への「何とかして」という追加の指示ではなく、時間と人の支援が必要です。
短い対応記録を作ります。
- 確認したこと:記録や本人の話から、実際に分かること。
- 未確定のこと:退職理由の全体像など、まだ分からないこと。
- 対応:変更する仕事の条件を一つ選び、準備する人を決める。
- 点検:実行されたか、さらに必要な支援は何かを確かめる方法。
次の点検では、研修が行われたか、説明を仕事で使えたかを見ます。短期間、新たな退職者が出なかっただけで、改善が退職問題を解決したと結論づけません。確認できたことと、期待していることを分けて残します。
院長の役割は、この確認を可能にし、医院が変えられる部分に対応することです。約束と日常の仕事の間にあるずれを一つ選び、チームと直し、もう一度確かめます。個々の退職理由に分からない部分が残っていても、具体的な改善は進められます。
まずは無料の30項目診断シートと試し読みから。完全版では、患者さんの体験を10段階で見直します。
無料の診断シートとガイドを受け取る